コラム

宮本 芳恵さん

在宅介護をされている方へメッセージ
介護は
「心と体の距離」
が必要です。

東京都日野市 医療法人社団英世会 介護老人保健施設ロベリア 副施設長兼看護長 宮本芳恵さん

東京都日野市万願寺。閑静な住宅街の中に、とても賑やかな老人ホームがある。介護老人保健施設ロベリア。「ろうけん」と呼ばれる種類のホームだ。館内に入ると、ご入所者とスタッフの笑顔が溢れ、四季折々のイベントの写真が壁に華やかに展示されている。

1階のリハビリテーションルームからは賑やかな笑い声。在宅での生活を目標に皆様、一生懸命リハビリに専念されている。ご入所者の最年長は101歳。シルバーカーでご自身の足でしっかりと歩かれている。まさにアクティブシニアだ。

スマイルエイジでは今回、在宅介護を頑張っている皆様へのメッセージとして、介護老人保健施設ロベリア副施設長であり、看護長の宮本芳恵さんにお話しを伺った。

介護施設で働くスタッフは人生の伴奏者です

家族だけで24時間365日大切な人を介護し続けることは不可能です。介護される人だけではなく、介護する人にも支えが必要なのです。

「自分の親は自分だけで看なければいけない」そんな時代はもう終わりです。社会資源を借り、人の力を借りる。自分だけで抱え込むのはもう止めにしましょう。

北欧では自分の伴侶が他界すると、子どもの世話にはならず自ら進んで老人ホームに入るのが慣習としてあります。老人ホームで仲間を作り、楽しみ、介護施設のスタッフが残された家族とともに二人三脚で生活を支えあう。

介護従事者はまさに「人生の伴奏者」なのです。決して一人で抱えこまず、介護のプロに相談し、最善の方法で介護していきましょう。

介護のしごとで最も大切なことは「笑顔」です

ご利用者が真の笑顔でいられる空間が大切です。もちろん介護従事者も笑顔でいないといけません。「日本一正しい緩和ケアができる看護師」が私の使命です。既成概念を排除し、常に新しいものを取り入れ、スタッフに伝授する。時代遅れになってしまえば、正しいケアはできない。スタッフにも外に出てもらい、時の流れを収集してきてもらっています。そして自分たちのしごとにどのような形で生かせるのか考えさせます。つまり「人間力の養成」です。

高齢者施設のしごとは「人生の緩和ケア」です。人間力が無いと出来ません。4大苦痛である「精神的苦痛」「肉体的苦痛」「社会的苦痛」「スピリチュアルな苦痛」をそれぞれの空間で緩和して初めて真の笑顔が引き出せると思います。「真の笑顔=安心=居心地」を探求し続けることがこの仕事で最も大切なことです。

心と体は一心同体です

心と体は一心同体です。例え親子でも、密着すると介護者の「介護疲れ」が起こります。離れすぎると「虐待」に繋がりかねません。心と体には程よい距離が必要です。

この距離を保つためには介護のプロを交える事が必要です。在宅介護で悩んでいる方はどうかお気軽に最寄りの「地域包括支援センター」「高齢者住宅情報プラザ」に相談してみてください。救いとなるはずです。

プロフィール

平成16年より現職。超多忙な業務の傍らで積極的な講演・講義・支援活動を行っている。施設では、これまでに300件以上の看取りを経験。認知症高齢者の理解を深める活動には特に力を入れており、終末期の意思決定支援(ACP)について取り組んでいる。看護師、介護支援専門員、リスクマネージャー、エンドオブライフ・ケア援助者、講師としても多くの団体に所属し講壇に上がる。